2010年 09月 12日
『そして誰もいなくなる』/今邑彩/中公文庫 |
名門女子校・天川学園の開校百年を祝う七夕際で、演劇部によるクリスティの「そして誰もいなくなった」の上演中に舞台の上で生徒が死亡する。しかも役柄通りに毒殺であった。劇は中止されたが、その後も演劇部員がキャスティング通りの手段で殺されていく。部長の江島小雪は顧問の向坂典子とともに姿なき犯人に挑むのだが。
1993年8月に出版されたノベルスの文庫版。尚、本作は1996年に文庫化されたものの増版が掛からず、十数年を経てこの4月に改版発行となったもの。
タイトルからも判るように、本書は『そして誰もいなくなった』をモチーフとした作品。原作を未読でも充分楽しめるよう配慮されていますが、先入観によるミス・リードの罠やニヤリとしてしまう趣向等、やはりクリスティ作品を読んでいた方が、何倍も楽しめると思います。
原作をプロットの一部として取り込んでの巧みな構成は素晴らしく、又、動機の点でも地に足がついていて、本家よりも納得がいきますね。そして、"真犯人"を"裁かれざる犯罪"と絡めて、こういう着地にもってくるとは。ただし、これはミステリとしてはアンフェア。伏線がないのですね。他にも、さすがに3人目からは警察の警護が付くのじゃないかとか、視点人物からすると部屋の描写が明らかにヘンとか、色々気になるところがあるのですよ。
とても面白かったです。でも、少々脇の甘さが気になったかしら。
1993年8月に出版されたノベルスの文庫版。尚、本作は1996年に文庫化されたものの増版が掛からず、十数年を経てこの4月に改版発行となったもの。
タイトルからも判るように、本書は『そして誰もいなくなった』をモチーフとした作品。原作を未読でも充分楽しめるよう配慮されていますが、先入観によるミス・リードの罠やニヤリとしてしまう趣向等、やはりクリスティ作品を読んでいた方が、何倍も楽しめると思います。
原作をプロットの一部として取り込んでの巧みな構成は素晴らしく、又、動機の点でも地に足がついていて、本家よりも納得がいきますね。そして、"真犯人"を"裁かれざる犯罪"と絡めて、こういう着地にもってくるとは。ただし、これはミステリとしてはアンフェア。伏線がないのですね。他にも、さすがに3人目からは警察の警護が付くのじゃないかとか、視点人物からすると部屋の描写が明らかにヘンとか、色々気になるところがあるのですよ。
とても面白かったです。でも、少々脇の甘さが気になったかしら。
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by sachiko_kaleido
| 2010-09-12 09:06
| 読書 今邑彩