2015年 12月 23日
『死のドレスを花婿に』/ピエール・ルメートル/文春文庫 |
ある時から記憶障害に悩まされるようになったソフィーは、恵まれた生活の全てを失う。ようやくありついたベビーシッターの仕事だったが、ある朝、施錠されソフィーとレオしかいない家の中で、彼が殺されているのを見つける。切羽詰まったソフィーは街を出て偽名を使い逃亡生活を始めるが、彼女の周辺には無惨な死体が転がるのだった。
2009年7月柏書房より単行本として刊行されたものが、出版社を変え文庫化されたもの。『その女アレックス』の原点とのことで、まずこちらからと手に取ってみました。
「ソフィー」「フランツ」「フランツとソフィー」「ソフィーとフランツ』の4章仕立て。ソフィーが狂気に近い心理に陥っていく1章、続く2章も、執拗な悪意が描かれ、ページを捲る毎に胸が苦しくなりました。
この1章から2章には視点の転換があります。読みどころでありましょうし、意表を突かれるのですが、早々にフランツの正体や彼の動機が判ってしまうのですね。何の為の場面転換(1章の答え合わせになっている)だったのかとしばし悩むも、謎解きが主眼でなく、異常心理に焦点を当てていると考えれば納得。
『~アレックス』の評判の高さから、本作もかなり期待したのですが、やや肩透かしでした。粗いと言いますか、まだ試行錯誤中なのかなという印象です。それでも、ラストまで緊張感を保ったままですし、物語の求心力は凄いものがありました。
さて次は『悲しみのイレーヌ』、いってみましょうか。
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by sachiko_kaleido
| 2015-12-23 19:35
| 読書 海外作家