2016年 03月 13日
『たまさか人形堂それから』/津原泰水/文春文庫 |
収録作
「香山リカと申します」 口紅が塗られたリカちゃん人形の修復を束前に頼む澪。
「髪が伸びる」 バンドマンの青年の祖母が溺愛する市松人形。
「小田巻姫」 軽井沢のコレクターへ小田巻姫のかしらを売りつけに来た男。
「ピロシキ日和」 スランプに陥った富永くん。
「雲を越えて」 人形たちのたまさか堂語り。
『別冊文藝春秋』2012年の3月・5月・9月号に掲載された作品に、書き下ろし(「ピロシキ日和」「雲を越えて」)を加えて2013年5月に単行本として刊行されたものの文庫版。
シリーズ第2弾。まだたくさん謎を残しているにもかかわらず、前作の終わり方がああいった形で、一人悶々としていたので、続編が読めて嬉しいです。今回もすごく面白かった。
幻想的だったり、ミステリ風だったりと短編ごとにバラエティがあった前作から一転、本作は一貫したテイストの下、長編としても読める作りでした。束前さんの初恋の人、お祖母ちゃん思いのバンドマン等、これからもストーリーに絡んできて欲しい魅力的な人物の登場で段々賑やかになっていく一方、去る人もいてー。更に今回は澪が店長として覚悟を決める物語でもありましたでしょうか。
特に好みだったのは「髪が伸びる」。タイトルを目にした時、少々嫌な予感がしたのですが(笑)、そちら方向ではなく、髪が伸びるからくりを追う面白さとバンドマンの優しさがじんわりと響くお話でした。ラストはうるり。こういうの弱いんですよね。
そして今作も津原さんの洗練された文章はとっても心地良かったです。第三弾ありますよね?
*
#
by sachiko_kaleido
| 2016-03-13 10:52
| 読書 津原泰水