2012年 12月 05日
『はぶらし』/近藤史恵/幻冬舎 |
脚本家の鈴音は、10年振りに高校時代の合唱部仲間の水絵から連絡を受ける。リストラに遭い、仕事を探し続けている彼女は、1週間だけ鈴音の家に泊めて欲しいという。鈴音は躊躇うものの、水絵の息子・耕太の存在が気にかかり、彼女達親子を受け入れ共同生活を始めるが—。
文芸PR誌『PONTOON(ポンツーン)』2010年7月号〜2011年8月号に連載された作品が、加筆修正のうえ、単行本として刊行されたもの。
正反対と言って良いほど、立ち位置が違う女性2人の、価値観の違いから来るあれやこれやが物語のメインとなります。序盤、新しく歯ブラシを買ったからと言って、今まで鈴音に借りて使っていた方の歯ブラシを返す水絵に、ただならぬものを感じるわけですが、案の定、1週間だけという約束は反古、じわじわと鈴音の生活圏を浸食する彼女に、気持ち悪さは募るばかり。いつ、庇を貸して母屋を取られる、になってしまうかと、気が気ではありませんでした。こういう、罪悪感を掻き立てたり、同情を引く立場を使って他人をコントロールしようとするタイプって確かにいる。ただ、シングルマザーに対する社会環境の不備や偏見等、判る部分もあるので、水絵の全てを否定はできないのですね。
こう書いてくると、読後感が悪そうな感じですが、意外や意外、爽やかとはいかないまでも、それまでのもやもやが一気に晴れる様なエンディングでした。色々な意味で、この物語は耕太がキーだったのですねえ。心の機微を描くことには定評のある、近藤さんらしい、非常にリアルな心理ドラマでした。
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文芸PR誌『PONTOON(ポンツーン)』2010年7月号〜2011年8月号に連載された作品が、加筆修正のうえ、単行本として刊行されたもの。
正反対と言って良いほど、立ち位置が違う女性2人の、価値観の違いから来るあれやこれやが物語のメインとなります。序盤、新しく歯ブラシを買ったからと言って、今まで鈴音に借りて使っていた方の歯ブラシを返す水絵に、ただならぬものを感じるわけですが、案の定、1週間だけという約束は反古、じわじわと鈴音の生活圏を浸食する彼女に、気持ち悪さは募るばかり。いつ、庇を貸して母屋を取られる、になってしまうかと、気が気ではありませんでした。こういう、罪悪感を掻き立てたり、同情を引く立場を使って他人をコントロールしようとするタイプって確かにいる。ただ、シングルマザーに対する社会環境の不備や偏見等、判る部分もあるので、水絵の全てを否定はできないのですね。
こう書いてくると、読後感が悪そうな感じですが、意外や意外、爽やかとはいかないまでも、それまでのもやもやが一気に晴れる様なエンディングでした。色々な意味で、この物語は耕太がキーだったのですねえ。心の機微を描くことには定評のある、近藤さんらしい、非常にリアルな心理ドラマでした。
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by sachiko_kaleido
| 2012-12-05 14:10
| 読書 近藤史恵